コラム 『白ヒゲの言いたい放題』

No.15 424病院公表の十大罪

申し訳ありません。このコラムに2か月余の空白が生じてしまいました。10月24日、25日の両日に私の育った阿波の国徳島で念願であった全国自治体病院学会が開催されました。私の眼の黒いうちにと思い、9月に両眼の白内障の手術をしての参加です。学会翌日の土曜日には最近恒例となっている学会懇親ゴルフを第2回LMC杯と兼ねて実施、優勝は未入会の西予市民病院の末光院長でした。実は全国自治体病院協議会のある幹部から「その日は別の学会のシンポジウムで参加できないので学会前にどうか」との提案があり、私の高校時代の悪友たちと学会の前日にもやりました。
その前週の日曜は雲南市立病院の病院祭と改築工事の完成式を兼ねた催しに招かれ、「街おこしの核は病院」というテーマで講演。翌日にはゴルフ。結局1週間に3ラウンド。10月は茅ケ崎や新潟、長岡京、東京のヤクルトホールなど色々な所に招かれました。千葉県の旭中央病院は台風の影響が心配されて中止、来年に延期となりました。心身ともに疲れがピークとなっていたのに加え、白内障手術後の眼鏡が合わないのか肩こり、めまいでコラムの発信が遅れたのです。
長々と言い訳を述べましたが、この間に9月下旬に発表された公立・公的病院で検証が必要な424病院に関するマスコミ、さらには当該病院からの電話やファックス、メールなどでの問い合わせ、対策教示の質問も寄せられました。この発表には色々な欠点があります。「十の大罪」として述べてみます。

  1. 発表は当該病院にだけか、調整会議メンバーの資料としてだけでもよかった。
  2. 資料が2年前のデータでは古すぎる。
  3. 判断基準が急性期の指標に偏り、地域密着型中小病院が評価されない。
  4. 6月1か月のデータのみ。この時期は田舎では田植えの農繁期。梅雨は多湿の天然ネブライザーで呼吸器疾患は少なく、高温で血管の病気である心筋梗塞や脳血管障害も少ない。そのため入院患者最少の医療機関が多い。
  5. 専門病院が評価されていない。兵庫県立リハビリテーション病院はシャム双生児のベトちゃん、ドクちゃんの分離後の義肢を作製。6月に災害がなかった災害医療センターも。機能分化と言いながら総合病院が必要と。全国で2つしかない脊髄損傷専門病院まで含まれている。目茶苦茶である。
  6. 既に統廃合された病院や調整済みの病院も含まれている。現場知らずの者がやって上司も目を通していない。
  7. 済生会中央病院が含まれているのには驚き。新築直後の部分開院の時期であった。厚労省近くの病院のことですら解ってないとすれば他は推して知るべし。
  8. 国保利尻病院など北海道では他に選択できる医療機関がない地域も多く含まれている。
  9. 424病院のうちどれだけの病院に係官は足を運んでいるのか?私は少なくとも90病院近く訪れている。
  10. 風評被害の大きさは予測していたのか?それが目的なら話は別であるが…

以上、欠点ばかり述べましたが調整会議の活性化という厚労省の目的に少しは寄与するのでしょう。当該病院の院長や職員の意識改革も進みます。何といっても首長や議員さんたち、ひいては地域住民が自分たちの街の地域医療をもう一度考える機会になります。
これから私論を述べます。財務省や経済財政諮問会議は医療費の伸びや地方交付税の繰入金を減らしたいのです。我々公立病院は病人から診療報酬をいただくだけに甘んじるのではなく、健康な人からもお金をいただく方向にシフトすべきです。つまり病院から"健院"を目指すのです。フレイル予防(口腔フレイルも含め)やロコモ防止、健康チェック、負荷付き人間ドック(酒やゴルフ、水泳やスキーなど普段のままで)など色々と地域に応じて工夫し、一番行政と身近なメリットを活かすのです。424の中には、これしか生き残れないところも含まれているのでしょう。柔軟な発想でピンチをチャンスに変えましょう!!

 

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