今月の一冊

■2023年10月1日

公私病連ニュース2023年10月1日号より転載

■2023年9月1日

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■2023年8月1日

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■2023年7月1日

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■2023年6月1日

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■2023年5月1日

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■2023年4月1日

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■2023年3月1日

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■2023年2月1日

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■2023年1月1日

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■2022年12月1日

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■2022年11月1日

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■2022年10月1日

またまた3冊を御紹介

1冊目と2冊目は故人で新旧の女傑2人の作品。円安とウイズコロナで外国人観光客が訪れる前にお勧めしたい古都の古寺巡礼。今が昭和の巡礼に戻れるラストチャンスである。まず新旧の旧は白洲正子の『私の古寺巡礼』。育ちの良さ、博識強覧でありながら慎み深くもある知の巨人の一冊である。もしも生前にお会いしていたらストーカーになったのではと思うほどの"大和撫子"の面目躍如の一冊である。  
まず緑の若狭の寺々からのお水取りで始まる。東大寺修二会と若狭井との繋がりなど。若狭小浜は私の学生実習の地で遠敷川や神宮寺、名田庄村などは懐かしい思い出の地。外科医として初めての赴任地が大和高田だったので葛城山や役行者小角の話もよく聞いていた。花背、久多、葛川もドライブしたことはあったが、千日回峰と関係深い明王院は初めて知った。平等院や熊野古道、長谷寺、室生寺も数回訪れたが全くの観光客、読んで恥ずかしくなった。金剛寺と観心寺は河内長野に叔母がいて従姉妹と行ったことがある。立派な寺だとは思ったが南北朝の六天皇が同時に住まわれていたとは夢にも知らず。読んだ後これから行きたい所がどっと増えたが免許証返上の身、どうしたものかと思案中である。記紀、神仏、美術と梅原猛先生と同格の鉄人と再認識させられる一冊である。  
新の女傑は昨年11月に亡くなられた寂聴尼の遺稿集『寂聴残された日々』である。東京の大叔母の所で度々会っていた永井良樹・仁子御夫妻(P.84)から送られた本であり、禁断を破って読まざるを得なかった。というのも、彼女は私の育った徳島出身で旧制徳島高女卒。私の母の後輩で、彼女は徳島市内の仏壇屋の娘であったが全寮制のため寮生活。私の母は門限破り常習の彼女から閂(かんぬき)開けの礫を窓に何回も投げられたと。母からは「名誉県民にあんな身持ちの悪い女はダメ」と聞かされ一冊も読んでいなかったのである。今では母も彼女も旅立ったので初見参と源氏物語を少しだけ読んでいた。筆力は凄いと思っていたが、今回、軽妙洒脱の境地の数々に接し、母も少しは切り替えが必要だったのかも?と。  
まず寂庵への訪問者の話から始まる。江國香織、井上荒野、角田光代さんに乙武洋匡氏。白寿まで生きたその人生は、とにかく小説より奇なりそのもの。徳島での空襲、母の死、眉山、室戸台風と思われる時化、阿波踊りや新町小学校などの描写は同郷の私にとって心に浸みる。東京女子大の時の真珠湾攻撃の話もあるが、反戦、死刑反対などは出家する前からずっと一貫している。51歳の時に中尊寺で剃髪、出家、天台寺へ晋山。酒井大阿闍梨からの守刀、関の孫六の話など興味深い話が詰まっている。最もおもしろかったのは、岡本太郎氏の秘書になれと言われたのを断り続けていたら、葬式の時に奥様から「貴女の部屋を2階に作ってずっと待っていた」と。66歳年下の秘書瀬尾まなみさんとの寂庵でのやり取りは、地元京都新聞でも時折拝見していたが微笑ましい。晩年の病気や怪我も前向きに捉えて流石である。中村哲氏や横田滋氏にも追悼的な文章を。いつも色々なことに興味を持つことが長寿の秘訣と改めて思い知らされた。76編のショートなので気軽に読める一冊である。寂庵ゆかりの嵯峨野へも是非にと。  
3冊目は、福井大学医学部地域プライマリケア講座教授井階友貴君の『赤ふん坊やと学ぶ!』である。地域医療は私のライフワークでもあり、彼は志摩市民病院長江角悠太君と並ぶ次世代のホープである。仲間と思うからこそ敢えてお二人は君付けで呼ばせていただいた。私が50年余りで到達した境地に彼等は10年余りで到達しているのは凄い。行政との付き合い方、地域住民への温かい眼差しと恕の心。病を診て、家族を視、街を観、社会や国を考える、本当の大医、国手である。  福井県高浜町のマスコットキャラクターでもある彼の"赤ふん坊や"のファンになり、8年前に函館で開催された全国自治体病院学会ではシンポジストとしてお願いした。彼はマンガを使ったりメディア対策などコミュニケーション力が素晴らしい。関電原発の不祥事で全国区となった若狭の片田舎高浜町で医療、介護、ヘルスプロモーションで街づくり、街の生き残りに全力を尽くしている。多職種協働、チームワーク、全員参加と理想的活動のリーダーでもある。全国各地の行政とも連携しており、国を動かす日も近いのだろう。

■2022年9月1日

公私病連ニュース2022年9月1日号より転載

■2022年8月1日

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■2022年7月1日

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■2022年6月1日

公私病連ニュース2022年6月1日号より転載

■2022年5月1日

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■2022年4月1日

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■2022年3月1日

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■2022年2月1日

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■2022年1月1日

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■2021年12月1日

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■2021年11月1日

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■2021年10月1日

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■2021年9月1日

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■2021年8月1日

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■2021年7月1日

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■2021年6月1日

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■2021年5月1日

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■2021年4月1日

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■2021年3月1日

公私病連ニュース2021年3月1日号より転載